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2012/06/17

Giro d’Italia~自転車乗りのイタリア旅行記~③マドンナ・デル・ギザッロ編




自転車バカのイタリア旅行記第3回。(→第1回トレント編、→第2回ミラノ編

前2回はタイトル通りGiro d'Italia観戦記でしたが、最終回の今日は自分の脚でGiro d'Italia。
目的地はイタリア・ロンバルディア州、湖水地方はコモ湖を望むギザッロ峠。
サイクリストの聖地と呼ばれるMadonna del Ghisallo(マドンナ・デル・ギザッロ、通称ギザッロ教会)まで、自転車借りて走って行っちゃったやっぱり自転車バカな旅の記録。




そもそも何故こんなマニアックな観光スポット(?)を知ったかというと、1年くらい前に放送されたTBS世界ふしぎ発見!のジロ・デ・イタリア特集で取り上げられてるのを見て、という実に偶然の出会い。
思えばあの時も別府選手出てましたよねー、TV取材の日に逃げ決めるとかなんというイケメン

あの特集見てる時は、ミステリーハンターのお姉さんがロードバイクで教会まできたぞー(息を切らしたりとかはない)みたいな演出だったので、街中の小高い丘の上にあるのかなーとか思ってんですけどね……ええ、見事な演出でしたよ、まったく。詳しくは後ほど……。



そもそもこのギザッロ教会が何故サイクリストの聖地になったのか。

……実はよく知りません(笑)

教会自体は17世紀に建立されたという真に歴史ある建築。
いつ頃からかはわかりませんが現在に至るまで、教会の置かれたこのギザッロ峠は、ロンバルディアのサイクリストにとって非常に有名なクライムポイントとなってきたそうです。それは険しくも心地よい傾斜然り、峠からコモ湖を望む素晴らしい景色然り、更にはGiro d'ItaliaやGiro di Lombardhia、Coppa Agostini、Giornata della Biciclettaなどの超有名自転車レースのコースに設定されたり。
そして1949年、時のローマ教皇Pope Pius XIIが、この教会に絵画として祀られているVirgin Mary、即ちMadonna del Ghisalloをサイクリストの守護聖人として宣言しました。このことからここがサイクリストの"名所"から"聖地"へと昇格したのではないでしょうか。実績から言っても申し分ありませんよね。



さて、前置きが長くなりましたが、ここから今回の旅行記を。

まずギザッロ教会を目指すにあたって、ミラノの北、コモ湖畔の街コモに拠点をとることにしました。ミラノからは電車で1時間ちょっとくらいなので日帰りでいけないこともないと思います。が、個人的にはイタリアの避暑地として名を知られるコモでゆっくりするのもおススメ。

余談ですが今回コモで泊まったユースホステル"Ostello della Gioventu Villa Olmo"。2週間のイタリア旅行中で最もお気に入りのYHです。10人部屋ドミトリー1泊朝食付€18とかなりリーズナブル。フロントも兼ねたダイニングスペースで夕食もオーダーでき、€10ちょっとで美味い郷土料理のコースを楽しめます。何よりスタッフのおじちゃんおばちゃんが気さくで物凄く良い人!他の観光スポットと違ってお客も少なめで落ち着いた雰囲気があるので、抜群に居心地の良い夜を過ごせると思います。強く強くおススメ。



さぁギザッロ教会を目指すにあたって、まずは地図!ということでCavour広場の観光案内所へ。窓口のお姉さんに地図を貰って行き方を尋ねる。


「マドンナ・デル・ギザッロに行きたい(`・ω・´)」
「(地図を指さしながら)ここよ」
「自転車で行きたい(`・ω・´)」
「山の上よ?わかってる?」
百も承知!!!!(`・ω・´)

「……ならばここに行くといいわ」


多少脚色はありますが割りとマジでこんなやりとりの末、1件のレンタサイクル店を紹介される。
お店は広場や駅の西側、ボルゴ・ヴィーコ通り/Via Borgo Vico沿いにあるとのことなので徒歩にて向かう。お店の名前は『run&bike』。


まぁ実際行ってみてもらうと一目瞭然なんですけどもね、

どう見てもロードバイク専門店です本当にありがとうございました

早速店内に入って店員さんに「自転車レンタルやってるって聞いたんですが……」と尋ねると「?」という顔をされ、イタリア語で何かまくし立てられる。

……まさか英語が通じない……だと……?

どうしようと思い悩んでいると店の奥からテンション高めなおっちゃんが出てくる。でさっきの店員さんがなにやら話している。おお、この人は英語いけるのかな?と思ってるとおっちゃんからもイタリア語でまくし立てられる。オイ。ハイパーボディランゲージタイムか……?と思ってると奥からもう一人、超絶イケメン店員が登場。

「いらっしゃい。どうしたの?(英語で)」

イケメン度300%ォッ!!!!

渡りに船、イタリア人ソサエティに英語のできるイケメン店員。
レンタルしたいことを伝えると「うちで貸し出せんのはロードだけなんだ。1日€30。できれば街中での降車・駐輪も盗まれちゃうからやめてほしいんだよね」とのこと。
「ギザッロ教会に走って行きたいだけなんだ」というと「ああ、それなら大丈夫だね、いいよ!」と快く承諾してくれました。

するとイケメン兄貴は奥からさっそくロードを取り出してきてくれる。こっちもロードのことをわかっていると思ってくれたようで 、

「フラットペダルのが良いよね」
「サドル高を合わせるよ。跨ってみて」
「パンク時のチューブ交換のやり方は?OK、替えのチューブをサドルバッグに入れておくね」
「シフトチェンジもわかるね?GOOD!」
「え?今日じゃないの?明日?じゃあこのボトルはプレゼントだ。明日は暑くなりそうだからね」

もう至れり尽くせり。
1日レンタル€30ははっきり言ってかなりの高額です。普通のレンタルの相場の3倍くらい?
ただし、ギザッロ峠を目指すヒルクライムコース、しかも総距離は60~70kmとなることはわかっていたので、ママチャリだとちょっと…ってのとパンクリスクも考えられる距離なので、このくらい徹底すると安心感が違います。

上でちょっと述べたように、ヒルクライム決行は翌日にしました。予め準備を万端に済ませてこの日は宿に戻ります。


そして翌日、朝9時にロードを受け取りにお店へ。


€30で雇った今回の相棒。
PRINCIPIAブランドって初めてだったのでこの時はよく知らなかったんです、が、今調べたらこいつ、このブランドのハイエンドフルカーボンバイクでした……アルテグラ完成車でお値段なんと€4000……自分のバイクより遥かに高い超高級バイク((((;゚Д゚))))アンタこれなら€30喜んで出しますよ!いや出して良かった!
踏み込んだ時のレスポンスも悪くないし、フラットペダルなのに登りでもそれなりに戦えるし、ダウンヒルでの操作性も良い、何より初めて乗るのに体に馴染むような抜群の親和感……今さらながら納得。いや通りでね。高いバイクって違うんだなぁ。


イケメン兄貴の笑顔で送り出され、いざ、ギザッロ教会を目指します。
コースはだいたいこんな感じ。

より大きな地図で To Madonna del Ghisallo, from Como を表示

コモからエルバErbaとアッソAssoを経由して峠の南側を廻るコース。約30kmと自転車乗りなら何の障害も感じない距離。

思ってたよりも結構戸惑う右側通行に悪戦苦闘しながらも、なんとか街中を抜け、次第に緑溢れる山道へ……


気持ちいい━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!!!!

いや、この写真撮った時は結構ひーひー言ってましたけど(笑)

今思えば自転車のスペックのおかげだったかもしれないんだけど、すっごく走りやすいんですよ、イタリアの道路!車道上の自転車(というか高速巡航するロードバイク)の存在が認められているという安心感!道行くドライバーの方が物凄く"わかって"くれているんですよね、ロードバイクの速度感覚とかこちらの進行方向の意思表示とか。幹線道路を走ってても余裕がもてるのでお互いに譲りあうこともできる。

そしてこの余裕があるということで、ロータリーシステムが実に威力を発揮します。お互いの速度感が絶妙に共有されているので、少しのブレーキングと合図で事足りてしまう。交差点なのに止まる必要がない!走行中の運動エネルギーをなくすことなく文字通り流れに乗って走り続けることができる。自転車にとってこんなに嬉しいことはないですね。

とは言え、

この日は5月後半にも関わらず最高28℃を記録する夏日となり、メッシュTシャツの上はともかく膝までまくっただけのGパンのあまりの通気性の悪さに熱もこもりがち。滝のような汗を流しながら坂道を登ること1時間、


標高754mの頂に建つマドンナ・デル・ギザッロ!
もうね、汗だくになって登り切った達成感とサイクリストの聖地を訪れることができた達成感との相乗効果がもう凄い。 「あ、神様っているんだ(゚∀゚)」ってこういう感じ。ムスリムのメッカ巡礼にはこういう効果があったのね、と妙に納得。


中は教会らしからぬ小さなスペースにあるとあらゆる自転車関係の品々がぎっしり!
ちなみにこの日は平日の午前中にも関わらず、たくさんのサイクリストがここを訪れていました。その大半が退職して隠居生活を楽しんでいるかのような50~60代のおじさまおじいさま方が多かったですね。還暦迎えてあの坂をクライムするとは……自分の隠居後の目標が早くも見つかったようです(笑)


入って後ろ上方を見上げれば往年の大選手たちのジャージが所狭しと並んでいます。 チッポリーニやインデュライン、バッラン、バッソまで。


ここに自転車を飾ろうと思いついた人は何なんですかね(笑)でもメルクスとコッピの使用車ですもの!有り難い!そりゃ高いところに飾らんと(圧倒的日本人思考)


祭壇の中央に飾られたこちらの方こそ聖処女Mary、またの名をマドンナ・デル・ギザッロ。すぐ無茶するし怪我もするし基本的に頭の弱い我等サイクリストに無償の愛を施し続けてくれる上に守ってくださるという紛うことなく神の如き存在。有り難や有り難や。
日本の神社みたいにお守りでも売ってれば箱買いするレベルなんですけどね、教会内の錆びた自販機でポストカード売ってるだけでした。ちょっと残念。その代わりに併設されてる博物館でピンズを買いました。


こちらがその自転車博物館。内装も新しく意外と最近できたものらしいです。ギザッロ教会についてwebで調べてるときもこの博物館に言及してる人が少なかったので。
4~10月は平日9:30~17:30日曜9:00~18:00、11~3月は平日10:00~17:00土日9:30~17:30(月曜及びクリスマス以降年末年始は休業)とのことなので、おそらく教会も同じ時間で開いてると思われます。


中はもう自転車一色。 "乗り物"としての自転車の仕組みを解剖したり、自転車の歴史、自転車レースの歴史が目白押し。博物館としては小さめな規模ですが、大変盛り沢山なコンテンツの数々。


言わずと知れたイタリアンメーカーBIANCHIの歴史をバイクの変遷で振り返る。フレームの材質はもちろんハンドルやサドルの形状、シフトシステムが変遷がわかって大変興味深い。


え?( ゚Д゚)……(つд⊂)ゴシゴシ……えぇ!?!?(; ゚Д゚)
これホントに達成したんですかね……これに限らず解説は全てイタリア語で記されているのでさっぱり読み取れず真相は闇の中に……。


パネルとレース使用車で振り返る自転車レースの歴史。


歴代マリア・ローザ。この横にずーっと何十着も並んでます。教会もそうでしたけど皆さん家に飾らずに寄贈するんですね。そっちの方が名誉なことなのかな……ギザッロ教会の影響力凄い。
ちなみに余談ですが、何十着ものマリア・ローザのうち、PC画面で名前が隠れてるのは上の画像左下の一枚のみ。メンショフさんのステルス能力はイタリアの博物館でも遺憾なく発揮されておりました(笑)



博物館と言っても去年などの新しい展示も多いです。上のマリア・ローザもそうですしね。バッソやアームストロング、コンタドールの勇姿も飾られており、自分みたいに歴史に疎いロードレースファンでも充分に楽しめました。



さぁ念願果たして帰路につきます。
帰りは往きとコースを変えて、ギザッロ峠の北、ベラージョBellagioの街へ下りコモ湖畔をぐるっと廻って帰りました。距離は40kmと少々伸びますが、コモ湖沿いに走る爽快感といったらもう堪りません!





一つ補足しておくと、復路は距離は伸びてはいますが峠坂を走る長さはむしろ短くなってます(地図参照)。つまり傾斜がより厳しいことになってるんですね。実際下り始めるとすぐにヘアピンカーブの連続です。より厳しい登りを楽しみたいドMなクライマーさんは迂回コースで教会に向かうことをおススメします。実際地元のローディたちは北側から登って南に下っていく人の方が多かったですしね。登りの力試しと長い下りを楽しめる良いコースだと思います。

あ、でもチャリ屋のイケメン兄貴曰く、今回の自分と同じように南側から登った後べラージョへ下り、自転車ごと船に乗ってコモ湖対岸に渡り、ぐるっと周って帰ってくるコースも気持ちいいよ!とのことでした。是非誰か挑戦してみてはいかがでしょう。

わざわざ日本からマイバイク引っさげてやってきたぜ!という筋金入りな方は、ミラノ拠点の日帰りコースでも楽々行けると思います。イタリアの鉄道は一番端の車両が自転車専用になっていて輪行袋要らずの輪行が可能、というサイクリストにとっては夢の様な設備がデフォルトで備わっています。流石。ミラノ⇔コモ間もそこまで距離があるわけではないので、自走するのも大いにアリだと思いますね!

 
さらに補足。
「教会には行きたいけど自転車はちょっと……」という方へ。バスでも行くことができます。
コモからベラージョへはC30路線のバスで行くことができます。運賃€3.10で1時間ほどで到着するそう。本数も朝は6時から1時間に1本、平日の通勤時間帯ならさらに多くのバスが出てます。
ベラージョからはC36路線のバスに乗って教会のあるマグレリオMagreglioの街で降車すればOK。ただしこの路線、本数がめちゃくちゃ少ないらしく、案内所のお姉さまの紹介では、
ベラージョ発11:10→11:40マグレリオ着
マグレリオ発15:22→15:53ベラージョ着
で帰ってくるしかないわね、とのこと(時刻表が変更されてる可能性もあるので実際行かれる方は案内所で確認を忘れずに)。
教会と博物館で3時間の時間を潰すのは流石に厳しい(笑)ので、お弁当でも持ってピクニック気分で行かれるといいと思います。峠の頂上から湖とアルプスの山々を見渡す景色は絶景ですよ!




とまぁ随分長いこと書きましたがこれにてようやくおしまいです。
遥々イタリアに来てまでギザッロ教会という辺境の地に聖地巡礼したいという酔狂な(笑)同志の力になれたら、とできる限り詳しく書き綴ってみました。ここに書かれていることをトレースすれば辿り着けるはず……たぶん。このエントリー、少しでもお役に立てたら幸いです。

ギザッロ教会までのチャリ旅は、走ってる間ももう楽しくて楽しくて。15日間のイタリア旅行でも一番の思い出となりました。 色んな出会いもあってコモという街も凄く好きになりました。是非また一度訪れたい素敵な街ですね。




さぁ全3回のマニアックイタリア旅行記もこれにて無事完結。
自転車エントリーはこの3部作が初めてだったのですが、こうやって旅の記録をまとめるのもいいもんですね。アニメの話ばっかりしてないで(笑)たまには自転車の話も綴ってみようと思います。それにしたって趣味の域からは1ミリたりとも逸脱しない安心と信頼のたたろぐ。

でも1つだけ言えること。次回エントリーは間違いなく『2012春アニメ感想』です乞うご期待(笑)





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