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2011/05/21

猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』を読んで

3月一杯で有効期限が切れるAmazon書籍割引券を使って大量購入した本を読もう企画第1弾。
毎日少しずつ読み進めて、読みきったものをここにまとめておきたいと思います。
また時を経てから読んだ印象も違うだろうしね。今の自分が何を考えどう感じていたのかも示す意味で。



さてその第1弾ですが、現・東京都副知事でもある猪瀬直樹氏の著作、『昭和16年夏の敗戦』。
中公文庫から出版されています。





余談ですが、この本を選んだきっかけは昨年2010年の国会答弁(予算委員会だったかな)。そこで自民党の石破茂氏が紹介していたので興味をもったのです。元防衛大臣でもある石破さんの軍事知識は凄いですよね。弁論も上手いので説得力が違う。まぁそれはさておき。


時は戦前、昭和16年。軍、官、民と幅広い分野から若く優秀なエリートたちを集め結成された「総力戦研究所」。ここで彼らは所員の指導のもと、模擬内閣を立ち上げ日米開戦後の戦争シミュレーションを行います。その結果は「日本必敗」の四文字。開戦前、既に負けることがわかっていた戦争の道に、なぜ日本は突き進んでいったのか……。



読んだ率直な感想を述べるならば『WWIIって若気の至りだったんだなぁ』って感じ。
だってこの本に書かれている戦争までのプロセスを見れば、どう考えたって日本というひよっこがアメリカという巨人(=大人)の掌の上で踊らされたとしか言えない展開なんだもの。「なぜ日本は大国アメリカに対してこうも無謀な(=負けることが自明な)戦争をけしかけたのか」、よく言われる話だけど、そうじゃない、「けしかけさせれらた」のだと実感。軍部の暴走とか東條首相が全部悪いみたいなことを学校では習った記憶がある(今の教科書がどうなってるか知らない)のだけれど、この本を読む限り必ずしもそれだけではない、という風に感じる。確かに利権だか派閥だかの縄張り争いも軍組織の中ではあったようだし、自身の能力を過大評価していた部分もあるだろう。でもそれだけじゃなかった。アメリカが日本の政治的、経済的、軍事的な状況をよく理解し、戦略的に少しずつ追い詰めて行ったのだと。日本が次第にそのレールに従わざるを得なくなるほどに。
恥ずかしながら中学校の教科書でも太字になってる『総力戦』の意味を初めて理解しました。弾薬全部使い切るほどの~って意味じゃなかった(笑)政治も経済も使っての戦争ってことだったのね。

唯一の希望があったとすれば、それは正に総力戦研究所のシミュレーション結果だったのかもしれない。余計なしがらみや自尊心、責任から離れた柔軟な思考だったからこそ真実に近づけたのでしょうね。

自分はこれから研究所メンバーの年齢世代に突入していくところ。自分もこうありたいものです。



ふと、戦後70年が過ぎようとしている今、日本は大人になれたのかな、と思いを馳せてみる。
戦後の焼け野原から爆発的な成長を遂げ、世界のトップまで上り詰めた経済と産業を持つにまで至った。
でもそれは大人の証なのか?
というか国家としての大人ってなんだ?そもそもなる必要があるのかないのか?



…………。



今日はこれでおしまい。




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